【恐怖体験】老舗でゾッとした話
どうもこんばんは。ドラ母です。
身バレ防止の為に詳細は伏せますが、独身時代のほんの短期間、私はとある観光地の老舗八ツ橋屋の支店でバイトしていました。
そこは間口が狭く奥行きが深いこの土地ならではの独特の建物で、1階が店舗、2階が従業員の休憩室となっていました。
古いせいか、奥に行くほど薄暗くひんやりと冷たくて、なんだかとても不気味な建物でした。
従業員は若い雇われ店長(社員)とバイト5名の計6名。
みんな女性で年齢も20歳〜50歳までと幅広くバラバラでしたが仲良く楽しくやっていました。
ある日のこと。
若い店長が連絡もなしに開店時間を大幅に過ぎて出勤して来ました。
寝坊しました、と言わんばかりのヘアースタイルで。
「おはようございますー。ちょっと本店で急な打ち合わせがあったので遅くなりましたー。」
人の遅刻は1秒たりとも許さない店長なので、もちろん私達は彼女の言葉を信じました。
道中で彼女の頭を突風がかすめたんだろうということにして。
「9時から本店にいたんで出勤9時で書いてますー。」
タイムカードなどは無く、出退勤時刻をエクセル表に自己申告する形式だったんですが、その日彼女は私達に突っ込まれないようになのか、わざわざ説明しながら入力していました。
相手は店長なんでいちいち突っ込まないんですけどね。
それからというもの、彼女は度々、本店だの研修だのと言っては遅れてくるようになりました。
最近えらく忙しいんだなと思ってはみたものの、遅れてくる日に限ってヘアーが乱れていたり目が腫れていたりスッピンだったりしてらしたので、やっぱり寝坊だろうなと皆んな薄々勘付いていました。
だけど相手は店長だし、本店に行ってないって証拠もないし皆んな黙ってたんです。
ところがある日、パートのAさん(45歳)が渋滞でほんの1分遅刻しました。
ほんの1分。
だけどそこはやはり社会人なので1分でも遅刻は遅刻。
店長は情け容赦なくAさんを遅刻扱いにしました。
普段から店長を怪しんでいたAさんにとってはそれがとても腹立たしく、その日から店長を毛嫌いするようになりました。
店長本人には気づかれないよう、陰口を叩くようになったのです。
そんなAさんを、50歳のBさんが優しくたしなめました。
「まぁまぁAさん。彼女はあなたよりウンと歳下なんだから、そこはアナタが大人にならないと。いつか彼女も頭を打つ時が来るだろうから。そんなに目くじら立てなさんな。見る人はちゃんと見てるから。」と。
AさんはそんなBさんの悪口も言うようになりました。
「わかったような事言って腹立つわー!」と。
もちろん、Bさんには気付かれないように。
いつしか私はAさんの愚痴聞き役になっていました。
「あぁこんなところ嫌だわ。不気味だし店長は意地悪だしBさんはいけ好かないし。早く辞めたいわ。」
小心者の私は辞めたいなら勝手にどうぞ、とは言えずに、"不気味"の部分にだけ同調しておきました。
「本当に不気味ですよねー。なんか出てきそう。」
とにかく愚痴が多い彼女は、ちょっと鈍臭くて店長から目の敵のように注意されてはブーブー言ってました。
マジで辞めた方がいいですよ、そしたら全部丸く収まるんで、と思いましたけどそんなこと言えないので、そんな言い方されたら嫌ですよねーとか適当な相槌うって聞き流していました。
だって私もただのバイトでしたからね。
社員なら問題解決に奔走したでしょうが、期間限定のバイトなんだから波風立てずにひっそりと過ごしたいですから。
誰も敵にまわしたくない。
それに私はなぜだか店長から厚い信頼を寄せられていたので、余計にこのまま頼りなる右腕的な立場を守りたかったんです。
要は八方美人てやつですね。
いちばん嫌いなタイプですが、当時は自らすすんで四方八方に綺麗な?笑顔を振りまいていました。
そんなある夜のこと。
20時になって店の奥で閉店準備をしていた時でした。
「お疲れ様でしたぁ〜。」
誰もいないはずの耳元で聞き慣れない女性の声が聞こえました。
「 えっ!?」
あたりを見ても誰もいません。
でも確かに聞こえたんです。耳元で。ハッキリと。
「うわぁーっ!!出たー!!」
あまりの恐怖に叫びながら店先まで走って行くと、その日一緒に遅番だったBさんが笑って立っていました。
「Bさん!今の、Bさんの声ですか?『お疲れ様でしたぁ〜』って、Bさん言わはりました?」
必死のパッチでBさんに聞くと、
「え、なぁに?私なんにも言ってませんよ。」と。
えええーーー!!!
やっぱり出たのかー!!
「実は…」
Bさんは自称霊媒師だったので、カクカクシカジカでと説明すると…
「ふーん。そうかぁ。
ドラ母さん。実はね、ずっと黙ってたんだけど、アナタの事、ずっと見てる人がいるのよ。」
「え?」
誰!?
「あなたが怖がると思って黙ってたんだけど、もうバレちゃったからしょうがないわね。彼女ね、舞妓さんなの。」
「えっ!?」
何!?舞妓さん!?
どーゆーこと!?
「そう。舞妓さん。彼女ね、もうずーっとアナタを見てるの。アナタからキラキラ光るオーラが出てるもんだから、微笑ましく見てるのよ。だから怖がらないでもいいから。何か伝えたい事でもあるのかもしれない。」
「…私に何を伝えたいんですかね…?」
「さぁ〜?わかんない!」
Bさんは明るく笑っていましたが私は全く笑えません。
ガクガクブルブルですよ。
翌日から仕事中でも舞妓さんの視線が気になって気になって仕方ありませんでしたが、特に変わった事なく相変わらずの日々でした。
店長に厳しくされるAさんから愚痴を聞かされてはなだめる毎日。
舞妓さんは私に何を伝えたいんだろうか。
しばらくして、その日休みだったAさんから店長の愚痴メールが送られてきました。
自分の遅刻を棚に上げて私ばっかり注意されウンザリ。もう辞めたい。そんな内容でした。
ちょうどその頃バイトの契約更新が間近に迫っていたので、もうそのタイミングで辞めたらいいじゃないか、休憩時間になんだよもう、と苛つきながらもいつものようにAさんをなだめる為に、
"確かに店長は遅刻でしょうね。あの乱れたヘアーと寝ぼけ眼が物語ってますよね。最近じゃ毎日ですからね。そりゃあ遅刻三昧の人に注意されたら嫌ですよね"というようなメールを送信しました。
店長に。
…
…
え。
え?
あああーーー!!!
気付いた時には後の祭り。
寄りによって店長の悪口メールを店長に誤送信したんです。
八方美人が仇となりましたがどうしようもないので開き直りしました。
"店長、大変申し訳ありませんがお話があります。"
追加で送信すると速攻で返信がありました。
"了解です"
…早っ。
いやぁ、震えましたね。
舞妓さんどころじゃない恐怖が全身を覆い尽くしましたよ。
その日は店長も休みだったので翌日話し合いの場が設けられました。
なんと本店からわざわざ部長もお出ましになり、部長&店長VS私。
あまりの窮地に、一応、しっかり目は空けてましたが、白目だったと思います。
まぁ、店長は遅刻を認め、逆に謝罪されましたが、居た堪れなくなった私は契約更新せずに辞めました。
Aさんと共に。
あの舞妓さんが私に伝えたかったことって多分…
八方美人さん、サヨウナラ。
だったんだと思います。
以上、"老舗でゾッとした話"でした。
おわり
今日もくだらない話を聞いて頂きありがとうございました。