結婚したくない男と結婚したい女 ラブゲームに勝ったのはどっち?
どうも。ドラ母です。
「恋愛はゲームや。惚れたら負けや。惚れさせろ」
これは、年頃になり色気付いてきた娘を心配したうちの父が発した名言です。
母に完敗した父が果たしてどれだけのゲームに勝って来たのかはわかりませんが、私は父のこの言葉を教訓に"恋愛ゲームに勝つ女"すなわちいい女を目指してきました。
その努力の甲斐あって出会った今の旦那。
優しい彼の笑顔を一目見た時に思いました。
"この人に愛される女性は幸せだろうな"
と。
職場の先輩からの紹介で出会った彼は、程良くオシャレでなかなかのイケメン。(私目線)
優しいのは笑顔だけじゃなく言葉の端々にも、包容力がありそうなところにも滲み出ていました。
ドラ母「(当時のガラケーに付けていた)ブードゥ人形のストラップのせいで何だか最近ついてなくて…」
旦那「じゃあ俺がもらってあげよっか?」
ドラ母「え、いいんですか?ありがとうございます。」
旦那「大事にするわ。」
ほらね。優しいでしょ。
しかも出会ってすぐの私に脈ありなのがバレバレ。
そんな彼との恋愛ゲームにはすぐに勝ちました。
磨きに磨いた私の色気漂うスレンダーボディと月に1度の縮毛矯正で手に入れたサラサラストレートヘアに目が眩んだのでしょう。彼はすぐに愛を告白してきました。
「好きです。付き合ってください。」
今時珍しい、どストレートな告白に心揺さぶられ、たいして好きでもないのに付き合う事にしました。
当時私は自分を守ってくれる男らしい人を理想としていました。
眉毛剃って香水付けて鏡の前でずっと髪型を気にしてるようなモテ色男タイプより、身なりに気を使わない非モテ汗臭タイプに、より男気を感じていたあの頃。
守ってくれるかどうかは定かではありませんでしたが、知れば知るほど彼は私の理想にピッタリでした。
初デートでは左の鼻の穴から約1.5センチの鼻毛が飛び出し、2回目のデートでは右の鼻の穴から飛び出した約2センチの鼻毛に鼻くそが絡まり、3回目のデートでは右が緑で左が赤という左右バラバラの靴で現れました。(しかもブランドまで違う)
普通ならドン引きするはずのシチュエーションですが私にはそんな彼が輝いて見えました。
"この人、鏡見ないんや…。男らしい!"
違うのに。男らしさはそこで判断するんじゃないのに。これぞ若気の至り。
ある意味外見で好きになってしまいました。
会う度に高確率で飛び出している鼻毛。それに見慣れた頃にはすっかり彼の虜になっていた私は彼の全てを良い方向に捉えていました。
1週間に1回しか連絡がなくしかもその内容が「明日会える?」という業務連絡のみでも、会ってもろくに会話が続かなくても、結婚願望なんてないと言われても、もうなんでもへっちゃらでした。
"マメに連絡しないなんて男らしい!マメなヤツは浮気するって言うからな。"
"口数少ないのも男らしい!調子いい事言うヤツは浮気するって言うからな。"
"結婚願望ないっていきなり言うなんて男らしい!いきなり結婚しよって言うヤツは浮気するって言うからな"
ほとんど恋愛経験もないまま彼に出会ったので、恋愛情報は全て受け売りです。
きっといつか素敵なプロポーズをしてくれるはず。そう信じて疑いませんでした。
告白されたあの時はゲームが始まっただけ。
私はまだ勝ってなどいませんでした。
それから4年もの間ゲームは続きました。
結婚したい女としたくない男。
まさに死闘。
終わりの見えない闘いに力尽きそうになり、女はとうとう賭けに出ました。
「子どもが欲しいなら早く結婚して。私の年齢もそろそろ考えて。私は子どもが欲しい。あなたが結婚しないって言うならあなたと別れて他の人と結婚して子ども産む。だから早く決めて。」
他の人って誰やねん。モテた事ないくせに。
一世一代の賭けでした。
なんだかんだ言っても優しい彼。彼を信じる私。これでやっと決着がつくはず。
「わかった。別れよう。」
はい?
「ドラ子がそこまで言うなら別れよう。今までありがとう。」
なんと彼は私の元から去りました。
すんなりと。
何?何でそんなアッサリ?
この4年は何やったん!?
こんなに好きやったのは私だけやったん!?
「ちょっと!何よ!?」
涙でぐちゃぐちゃな顔でブチ切れながら必死で彼にすがりました。
「そんなに結婚したくないの!?私じゃあかんの!?そんなに簡単に別れられるの!?」
「え、だって…。早く決めてって言ったやん。」
言ったよ!言ったけどさ!早すぎるやろ!
「そんなに好きじゃなかったって事!?」
酷いやんか!!
「いや違う。ただ今はな、考えられへんねん。」
「結婚を!?」
「いや、全部。」
「なんで!?」
「だってさ…。こんな時間やで?」
深夜0時。
23時にはおネムになるめっぽう夜が弱い男。
考えられへんて将来じゃなく脳みそ事情か!!
「明日…。続きは明日話そう。」
彼はそう言って帰って行きました。
どうしよう私。眠いからって別れを選ぶ男にすがってる。最悪。
でも後がない。"他の人"なんて見つかる自信もないし彼以外好きになれへん!
どうしよう…
その日は涙と不安で眠れない夜を過ごしました。
そして次の日。
「今は無理やけど近いうちに結婚しよう。」
意を決した彼の力強い言葉。よく眠れたようです。
「それ…それってプロポーズ?」
「いや、違う。それはまた今度。」
それからすぐに彼は転職しました。
結婚を渋った理由は仕事への不安からだったようです。
そしてとうとう待ちに待った日が来ました。
「次の休みの日、ドラ子のお父さんとお母さんに挨拶に行くわ。結婚の。」
あぁやっと!やっと待ちに待った日が!
あれ?
「ちょっと待って。なんか忘れてない?挨拶の前にさ、ほらなんか私にさ…」
プロポーズ、忘れてる?まさか。
「え、あ、こんな時間。送っていくわ。」
時刻は23時。おネムな時間。
まぁ、いいか。口下手やから照れてるんやろう。ゆっくり待つ事にしよう。
1週間後、彼は鼻毛を綺麗に切って私の両親に結婚の挨拶に来てくれました。
そしてめでたく結婚した私達。
結局プロポーズはされていません。
プロポーズされてないのに結婚したなんてボロ負けやんか!!
なんだか寂しくて悔しい新婚時代の幕開けでした。
そんなある日、旦那のクローゼットから見慣れない箱が出てきました。
なんだろうと思い開けて見ると…
出会った頃に旦那にあげたブードゥ人形のストラップでした。
「旦那くん、これまだ持ってたん?懐かしい!なんでまだ持ってたん?まさかなんかお願い事とかしてたん?私と結婚できますように、とか??」
新妻のイタズラな質問にリアクションの乏しい旦那が珍しく驚いて聞き返しました。
「え、なんでわかったん!?」そして…
「大当たり!!」
これでやっと心が幸せいっぱいになった新妻なのでした。