母として後悔ばかりの夜を幸せな時間に変えてくれた娘
「ママの耳って小さいな」
母の横顔をマジマジと見つめていた6歳長女いち姫が突然言い出しました。
「何よ、急に?」
確かに母の耳は小さいけれど、大人でさえなかなか気付かないよ?
かれこれ14年間一緒にいる君のパパでさえ気付いていないよ?
「うわっ!ママ、見れば見るほど耳小さいな!しかも、顔、デカっ!!」
あぁ、顔ね、顔のデカさね。
それはまぁ、だいたいの人が気付くかな。
たいして近づいてないのに「なんか近い」とか「なんか圧を感じる」とかよく言われるよね。
顔面の面積が広いって人の遠近感覚を狂わせるみたいね。
「ママ、耳小さいのに顔デッカいな!!顔がデッカいから耳小さく見えるの?どっちなん?顔デッカいなー!」
知らんがな。
顔は大きく、耳は小さく生まれて来ただけやがな。
ほっといてよもう。
「いち姫ちゃん、人の顔とか外見をそんな風にバカにしたらあかんよ、傷つくから。」
「わかってるよ。バカにしてないし。ママにしか言わへんやん。」
確かにそうやな。
パパにすら言わへんもんな。
逆になんで?
まぁ、確かにパパは顔小さいし、鼻は高いし、全体的に整ってるからな。
毎日毎日、母の外見で新たな発見。
そんな細かいとこまで気付くとは6歳恐るべし。
もういいよ。もういいから、あんまりジロジロ見てこないで。
その夜。
なかなか眠れないいち姫を少しキツめに叱りました。
「いつまで起きてるん!?さっさと寝て!明日も幼稚園やのにいつまでも起きてたら朝起きれへんよ?しんどくなるよ!?」
スヤスヤ寝息を立てているニ太郎が起きてしまうんじゃないかと言うほどの声を張り上げて。
ニ太郎が生まれてからずっと、就寝タイムにママを取られっぱなしのいち姫は泣きました。
シクシクシクシク泣きました。
あぁ、泣かせてしまった。
普段、いっぱい寂しい思いさせてるのに。
いっぱい我慢させてるのに。
いっぱい甘えさせないといけないのに。
夜寝る前と、朝のお出かけ前だけは必ず笑顔でいるぞ!という毎日の目標も虚しく、いつもいつも叱ってしまう。
早く寝なさい。早く起きなさい。早くしなさい。
早く早く早く早く早く!!
今日だって自分がさっさと電気消せば良かっただけやのに、いつまでも用事して15分前にやっと電気消して早く寝なさい!なんて無理やろ、そんなん。
人一倍マイペースないち姫にイラッとしたり、このまま小学生になって大丈夫なのかと焦ったり、結局は自分の親としての器の小ささやんかと自己嫌悪に陥る毎日。
本当に私は酷い母親。
事あるごとに自分を責めてよけいにイライラしてしまう。
やっとニ太郎の添い乳が終わっていち姫の隣に行くと、枕が涙で濡れていました。
ずっといち姫に寄り添ってくれていたパパが離れてやっとママと2人きり。
いち姫が言いました。
「なんでママはニ太郎ばっかり見て私を見てくれないの?私はずっとママを見てるのに。」
そこでやっと気付きました。
なんでいち姫が私の外見で毎日新たな発見してるのか。
なんで私だけなのか。
ママの事が大好きだから。
ママが大好きで大好きでずっと見てるから。
なのに私は、叱ってばかり。
「ごめんね。ごめんね、いち姫ちゃん。いっぱい寂しい思いさせてごめんね。ママは誰よりもいち姫ちゃんが大好きよ。」
2人でぎゅーっと抱き合いました。
大切な大切な子。
もちろん、ニ太郎も大切。
だけど今は、この瞬間は、ママはあなただけのもの。
すると、いち姫が言いました。
「少しでいいから、欠けらでもいいから、硬くてもいいから、ひとくちでいいから、ほんの少しでいいから…
ローストビーフが食べたい。」
へっ???
いち姫は、ばあばの作るローストビーフが世界一の大好物です。
給料前で近頃は牛肉なんて食べてなかったので、もう我慢の限界を超えたようでした。
「わかった。じゃあ、パパにお肉買ってもらって、ばあばにローストビーフ作って貰おう。お肉高いから、パパに頼もう。」
「うん。」
いち姫はしばらく考え言いました。
「じいじがいつも机に置いてる貯金箱。あれ、じいじ、使わないのかな?」
「え?いち姫ちゃん、まさか、狙ってんの?」
愛娘を疑うとは何という親でしょう。
「違うよ!ただ、アレさえあれば、何でも買えるんじゃないかなって思っただけ。」
やはり狙っていたようです。
いち姫の発想がなんだか笑えて来て2人で声を抑えて爆笑しました。
布団に潜って2人で抱き合いながらたくさん笑いました。
笑いすぎて涙が出ました。
笑い疲れたいち姫は、そのまま幸せそうな顔をして眠りにつきました。
私の腕の中でとても安心した顔をして。
後悔してばかりの夜を、幸せな笑顔の時間に変えてくれた愛娘に、感謝してもしきれない母なのでした。
子どもって偉大。
ママも毎日が新たな発見ばかりだよ。
生まれてきてくれてありがとう。大切な子ども達。
今日もくだらない話を聞いて頂きありがとうございました。
それでは、また♪