全然休めない俺の休日〜後編〜
前編はこちら⬇️
PM2:00 植物園に到着
嫁の機嫌がいい。
良かった。人はあまりいない。密は回避。
花よりも大量の落ち葉に興奮して走り回る子ども達。
子ども達の笑顔にご満悦な嫁。家族を笑顔にした俺、グッジョブ。
あぁ、自然はいいな。空気も美味しい。家族もご機嫌。
最高の休日だ。
最高の…うっ…。腹が痛い。昼のペペロンチーノが暴れ出した。トイレはどこだ。
うっ、くっ…。
ふー。良かった。波は去った。今のうちにトイレの場所を調べなければ…あー、あそこか。はいはいはい。
おっ、コーヒーが売ってる。買お。
うん。なかなか美味しい。温かいコーヒー片手に空気が澄んだ冬の植物園を散策。なんて素晴らしきホリデイ。
お?二太郎、また小石を口に入れたのか。
全くもう、1秒も目が離せないな。…って、うっ、ヤバい!くそっ。また腹が痛い!
大波が来た!急げ。間に合うか!?
俺「トイレ行くから子ども達をよろしく!」
嫁「…はーい」
PM2:30 家族と合流
やっと見つけた。
俺「ここにいたん?探したで!お待たせ。」
嫁「何がお待たせや。遅すぎんねん。」
おっと。嫁様ブチ切れ。
俺「ごめんごめん。めっちゃ腹痛くてさー。ペペロンチーノがあかんかったかも。」
嫁「あーそうですか。すみませんでしたね。」
おっとっと。また嫁様ブチ切れ。
だってさー。ニンニクが多すぎるよ、あれは。なんて言わない。
俺「いやいや、美味しかったで?ペペロンチーノ。俺の腹がデリケートなだけ。ママのせいじゃないで。」
本音を包み隠してリップサービス。
なのにノーコメントな嫁。
ふー、しんどい。俺の腹がデリケートなのはストレスだな。絶対に。最近なんて蕁麻疹まで出没してきた。
嫁「あのさー。私達ずっとここに居たんやけど?」
俺「へっ?」
嫁「元の場所(トイレの近く)でずっと待ってたのに全然逆方向に走って行ったやん。呼んでも気づいてくれへんし。しかもトイレめっちゃ長いし。」
あー。確かに。元居た場所だな、ここは。
確かに全然違う場所探し回ってたな、俺は。
確かにトイレも時間かかった。
だけど全力疾走してこうして君達の元へと辿り着いたんだからそんなに怒らなくたっていいじゃないか!
ちょっとした事ですぐにイライラすんなよ!
俺「ごめんなさい。」
嫁の機嫌が悪い。
謝ったのに。
言いたい事も言わずに我慢して謝ったのに。
なんだコイツは。ホントに腹が立つ。
マジでムカつく。いつもいつもちょっとした事でブーブー怒りやがって。
俺「荷物持とうか?」
内心キョーレツにイラつきながら嫁にゴマするのをやめられない俺。家庭円満を守り抜く健気な俺。
嫁「ありがとう。」
なんだよ。頼んのかよ。
ふんっ。やっぱり俺が居ると助かるんだな。全く。素直じゃないヤツ。
嫁「やっぱりいい。」
え?なんで?
嫁「リュックに携帯入ってるから自分で持つわ。どうせまたパパと逸れるやろうから。」
俺「いやいや、もう大丈夫やって。もう全部出切ったから。」
眉間に深すぎる皺を寄せて俺の言葉を無視する嫁。
俺の腹の残量物への嫌悪感が半端ない。
癒しの笑顔を振りまく子ども達とは対照的に、俺達の間にはすごい勢いで北風が吹いている。
太陽はどこだ。早く嫁を照らしてくれ。そしてこの鉄仮面を引き剥がしてくれ、早く!!
そんな願いも虚しく空は雪雲で覆われている。
冬の植物園てこんなに虚しいものだったのか。
PM2:50 あいにくの雨
雪雲じゃなく雨雲だった。
くそっ。天気予報はしっかり確認して来たのに。
だけど雲の合間に晴れ間が見えるからきっと通り雨だろう。
すぐに止むだろうからこのまま待っていようと言う嫁と、ぐずり出す子ども達を園内の休憩所で待たせておいて、急いで傘を取りに行き、颯爽と戻って嫁に傘を渡した。
じっと雨が止むのを待つなんて性に合わない俺、またまたグッジョブ。
嫁も感謝するだろう。
嫁よ、そろそろ旦那に敵意では無く敬意を払え。なぁ、嫁様よ。
嫁「なんで傘1本なん?」
俺「へっ?」
嫁「車に傘4本あるのに、なんで1本しかないの?」
おいおいおいおい。礼も言わずにクレームか!?
そりゃないだろ。
俺「いや、すぐ止みそうやから1本でじゅうぶんやん。たくさん持って来たら邪魔になるやん?ママと子ども達が濡れへんかったらいいし。俺は濡れてもいいから。」
どうだ。この自己犠牲の精神。
妻子の為なら俺は濡れても構わないんだゾ。
嫁「そうなんやー。二太郎抱っこしながら、いち姫が濡れんように気を使いながら傘をさせってかー。難しいわー。パパよろしく。」
なんだと!?
嫌がる二太郎を押し付けてくる嫁。
全力で俺を拒否する二太郎。
あぁ、どうしていいのかわからない。
うっ、うぅ。腹が痛い…気がする。
俺「じゃあ、このままここで雨が止むまで待とうか。」
嫁「だから言ったやん。」
俺「…」
最後の嫁の言葉は、聞こえないフリをしておいた。
あぁ、台無しだ。
イライラし通しの嫁に気を遣いまくってせっかくの休みが台無しだ!
おっ、雨が止んだ。
早くここから出よう。
休憩所を出て歩き出したら、だんだん笑顔になって来た嫁。
なんだ、俺じゃなくて雨にイラついてたのか。
いち姫「パパー!!鬼ごっこしよー!」
俺「よーし!パパが鬼やでー!」
人がいない広場でいち姫と鬼ごっこしていると、二太郎も喜んで走り出した。
そんな俺達3人を見てケラケラ笑うご機嫌な嫁。
いち姫「ママも一緒にしよーよ!」
嫁「はーい!」
愛娘の可愛い誘いにノリノリで参加する嫁。
背中には何が入っているのか重たいリュック、腹周りにはダルダルの脂肪をまとって、足なんか鉛でも入ってるのかというほどに動きが鈍い。
おっそ。
よし、アイツを狙おう。
一瞬で追いつきタッチした俺に一瞥をお見舞いしてくれた嫁は、息を切らしながら言った。
嫁「ママもう無理。はぁはぁ。もうやめる。死にそう。」
マジで死にそうなくらい息を切らしてる嫁。
大丈夫か?ホントに苦しそうだけど。心配だ。
俺「ちょっとジャンパー持っててくれる?」
はぁ!?と言いながらジャンパーをぶん取る嫁。
え、何怒ってんの。
だってキミ休憩するんでしょ。俺はこれから走るんですけど!?なんて、もちろん言わない。
あ。はあ!?じゃなく、はああ!だったのかな。息切れのせいか。
まあいい。子ども達が待っている。
PM4:00 植物園を出る
はあ疲れたー。
鬼ごっこに、芝生での相撲に、肩車に…。
俺はもうヘトヘト。足ガクガク。
だけど運動は気持ちいいな。
気分爽快だ。
嫁も満面の笑みを浮かべている。
楽しかった。そろそろ帰ろう。
嫁「楽しかったねー。気分転換になったわ。パパありがとう。疲れたでしょ?」
お、嫁の機嫌が最高潮だ。
俺に向ける眼差しが温かい。何日ぶりだろう。
ずっとそんな眼差しを向けてくれたら、とても癒されるのに。
俺「いやいや。どう致しまして。いつもお疲れ様。」
俺の言葉に目からハートを出しながら嫁が腕に絡みついて来た。何ヶ月ぶりだろう。
嫁「パパもお疲れ様。大好き。」
大好き?大好きって言った?何年ぶりだろうか。
連日の寝不足イライラが、こんなちょっとした事で解消されるとは。
俺って最高の旦那で最高の父親だな。
休みの日までバリバリ働いてる。働き過ぎだ。
しかも大変なのはこれからだ。
帰ってご飯作って食べさせて風呂に入れて寝かしつけ…。
なんとか9時までに妻子を寝かせなければ。
そしてその後は…、
俺のお一人様タイム!ゲーム三昧タイム!
明日は仕事だから12時までしかできないけれど。
さぁ、段取りよく進められるよう早くスケジュールを立てなければ。嫁の機嫌が良いうちに。
俺「夜ご飯は鍋焼きうどんで決まり?」
一瞬、嫁の顔が強ばった。
しまった。またメニューを聞いてしまった。
俺「あー、もうこんな時間やからさー、簡単メニューにして片付けも楽なのにして、ママ疲れてるから早く寝て欲しいなーと思って…」
必死になって言い訳を並べ連ねていると嫁が言った。優しい顔で。
嫁「夜ご飯はね、もう決まってる。」
俺「え、何?」
嫁「釜玉うどん。」
すごい。究極の手抜きメニュー。さすがは俺の嫁様。
まな板と包丁を使う料理が嫌いだと常々言うだけの事はある。
3食小麦粉メニューなんてお構い無しだ。
ちょっとは栄養バランス考えろよ。
俺「ナイスアイデア!」
PM5:00 夕食
嫁の機嫌がずっといい。
うどん好きな子ども達の機嫌もいい。
二太郎は生卵じゃなく炒り卵うどんをパクパク食べては撒き散らしている。
あーあ。うどんに牛乳入れてカルボナーラうどんみたいになってるよ。
隣でドン引きしながら見ていたいち姫がカルボナーラうどんを味見。なかなかイケるそうだ。
俺はごめんだ。こんなゲテモノ絶対食べない。
嫁は相変わらずゆっくり食べられていないけど、楽しそうだ。
植物園に行ってマイナスイオンを思いっきり吸い込んだのが良かったんだろうな。
ホントに俺は家でも外でもいい仕事をするよな。マジで。
お、嫁が片付けを始めた。
さぁて、次は風呂だな。二太郎はうどんやら牛乳やらお茶やらでずぶ濡れだ。
俺「風呂沸いてるー?」
嫁「…」
あれ。聞こえなかったのかな。
あれ、沸いてない。早く沸かそう。
PM6:00 風呂
風呂が沸いた。
俺「ママ、先入っておいで。後は俺が片付けるから。」
嫁「ありがとう。」
ご機嫌な割には笑顔が少ない嫁がそーっと風呂に入って行った。
その数秒後。
察知した二太郎が母を探して泣き喚く。
1歳5ヶ月なんだけど後追いっていつまで続くんだろう。いち姫の時の事はもう忘れた。
ギャーギャー泣き喚く二太郎。
こうなったら俺はもうお手上げだ。
二太郎と共に風呂の前でじっと待つ。嫁が二太郎を呼んでくれるのを。
嫁「二太郎の服脱がせて」
見兼ねた嫁がすぐに呼んでくれた。心なしか冷たい眼差し。
母親って大変だな。
あ、父親も大変だし、お互い様だな。
嫁と二太郎が体を洗い終えたところで俺といち姫が入る。
狭い風呂に家族仲良くギュウギュウ詰めで入れるのも、休みの日の醍醐味だ。
PM8:30 寝かしつけ
やっとこの時間が来た。
結局、風呂でいち姫と遊び、上がってからもいち姫と二太郎と遊び、嫁に怒られてやっと2人が布団に入ってくれた。
後は俺の得意な寝たフリをするだけだ。
親が寝たフリをすれば子どもも諦めて寝る。
嫁は二太郎に添い乳し、いち姫は嫁の背中に張り付いて離れない。
俺はただじっと耐えるだ…け…
PM10:00 就寝
嫁「ちょっと!起きてよ!パパがそこにいたら、いち姫が狭いやんか!」
ブチ切れ嫁に揺さぶられハッとした。
あれ、寝てたのか、俺。
しかもいち姫の布団で。
俺「ごめんごめん。じゃあ、部屋に戻るわ。おやすみ。」
嫁「おやすみ」
やっと眠れる。1人でゆっくり。
あ、でも、寝る前に聞いておかなければ。
なんだったかな。うーんと。えーと…
俺「明日の朝ご飯は何?」
嫁「うるさいわ!!」
完
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今日もとんでもなく長いくだらない話しを最後まで読んでくださって本当にありがとうございます。
それでは、また♪